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消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討WG報告書

 

 

2021年8月11日付の消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グル

ープ報告書が、8月19日に公表されました。

www.cao.go.jp

かなりの部分を自主規制・共同規制に関する内容が占めていますが、「第4 自主規制の整備が求められる新しい取引分野」中で、インターネット上での取引においてよく見られる分野について、今後の規制の方針が示されています。

取り上げられたのは、次の4つです。

  1. アフィリエイト広告
  2. 後払い決済サービス
  3. ターゲティング広告
  4. CtoC取引

このうち、4は私の業務や職務とあまり関わりがなく問題意識もいまいち分からないので、1~3の各項目について概要を紹介します。

1.アフィリエイト広告

悪質なおためし商法(「お試し無料」等をうたい実際は定期購入を条件とした契約を締結させるもの)等に対応するため、次のような自主規制の導入が検討されています。

  • 事業者団体による虚偽・誇大広告基準の策定/留意事項の提示
  • ASPによるアフィリエイターの管理画面等での適正な広告表示の促進

なお、これらの自主規制が行われても消費者被害が発生する場合には行政規制の整備を検討するものとされています。*1

アフィリエイト広告については、2016年6月30日付で消費者庁から「アフィリエイトサイト上の表示についても、広告主がその表示内容の決定に関与している場合(アフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合を含む。)には、広告主は景品表示法及び健康増進法上の措置を受けるべき事業者に当たる」との解釈が示されており、表示内容の決定に関与した広告主が景品表示法の適用を受ける旨の解釈が示され、これに沿った行政処分の事例もあります。

さらに、消費者庁担当者による書籍でも「広告主がアフィリエイト広告の内容を知らなかったとしても,上記のとおり表示主体性が肯定される場合として他の事業者に表示内容の決定を委ねた場合が含まれることも踏まえれば、そのことによっても広告主の表示主体性が否定されることにはならない」*2との考え方が示されていて、消費者庁が積極的に規制しようとしていることが分かります。

この報告書に示された方向性も含め、アフィリエイト広告を利用する事業者は、今後の動きを追っていく必要がありそうです。

 

2.後払い決済サービス

悪質なお試し商法における後払い決済サービスの利用に対応するため、次のような自主規制の導入が検討されています。

  • 過剰与信の防止、苦情処理体制、加盟店審査や運用状況の確認等を含んだ統一したルールの策定

こちらについても、消費者被害が発生している場合には行政規制の導入を検討するとされていますが、具体的な検討会はまだ立ち上がっていないようです。

 

3.ターゲティング広告

ターゲティング広告を目的としたデータの取得・利用について消費者に懸念、不安及び抵抗感が生じていることを踏まえ、次のような自主規制の導入が検討されています。

  • 消費者の視点*3を踏まえた対応
  • 消費者の認知限界を踏まえ、消費者の期待に反して利用しないという観点からの対応

個人情報保護法の令和2年改正により個人関連情報制度が導入されることにより、ターゲティング広告にサードーパーティクッキーの情報を利用する場合にも本人の同意が必要となりますが、こちらの規制はさらに消費者の視点から分かりやすい情報提供を行うことを求めるものと整理できます。

このような情報提供の内容が、個人関連情報に関する本人の同意の有効性に関する一要素になるかもしれません。

 

 

 

まとめの文章を検討したのですが、なかなか思いつかないので、ちょっと尻切れトンボですがここで終わりにします。

 

 

*1:行政規制の整備についてはアフィリエイト広告等に関する検討会 | 消費者庁で扱われているようです。

*2:西川康一編著『景品表示法(第6版)』(2021年 商事法務)54~55頁

*3:事業者によって開示される情報等が消費者にとって理解しやすいものになっているか、ターゲティングから離脱する際のオプトアウトの設定方法が消費者にとって効率的かつ利用しやすいものとなっているか等の視点